計画艦は基本設計の変更こそなかったが、兵装をはじめ、建造年次により改良・修正が加えられていた。しかし、年次深刻化する宇宙の寒冷化の影響で、従来の〈コグダール機関〉では出力が安定しない局面が増えていた。この点を鑑み、永久管理機構は〈コグダール機関〉とボラー砲を強化した新型艦の建造を80号計画として策定。新型計画艦の艦種は「アーコフ」型とされた。アーコフは「高貴な船」「偉大な船」「大きな船」といった意味を持ち、計画時の新型艦への期待の大きさが窺われる。
試験艦の建造は連邦構成国のひとつであるバースに割り当てられた。これは、当初の期待とは裏腹に、新型艦の建造計画の難航を見越して、責任の所在を永久管理機構ではなくバースへ押しつけるための処遇であったともいわれる。
バースはこの試験艦に王家の名である「ラ=ジェンドラ」を与えた。〈ラ=ジェンドラ〉はボラー語で「支配する者」を意味し、ボラー帝国時代に朝貢し、この地の支配者として認められたバースの王家が与えられた名である。