宇宙戦艦ヤマトは参戦章叙勲式典後、軍書類では予備役艦隊へ編入、訓練航海へ出航したと記載されている。しかし、これはデザリアムの地球侵攻に備えた防衛軍統括司令長官・藤堂の指示であった。
解体された第65護衛隊構成員の移動も、ヤマトの秘匿も、「オペレーションDAD」の一環であり、ヤマトは長官直角特別任務群の中核となるべく、真田志郎二等宙佐の指揮の下、さらなる新装備を搭載すべく、イカルス天文台で改造が進められていた。
〈イカルス天文台〉
イカルス天文台は内惑星戦争期に建設された。宇宙観測の名目で国連当局が建設した常駐宇宙基地だったが、実際には対火星戦争を前提とした国連宇宙海軍の艦隊基地のひとつであり、内部に整備用ドックを有した。ガミラス戦争後、地球の防衛戦略の変化にともない放棄されていたものを、藤堂たちはオペレーションDADの一環としてヤマトの秘匿と改造のために利用することとした。ただし、整備用ドックは旧世代艦のサイズを前提としていたため、小惑星内部の岩盤を掘削するなどの拡張工事が行われている。
また、イカルス天文台は事実上破棄されていた施設であったことから、ヤマト発進時にはドック周囲を爆砕することが前提とされた。これは改装についての情報がデザリアム側に渡ることを防ぐ措置でもあった。
〈波動カートリッジ弾〉
波動カートリッジ弾(制式名称:七式波動共鳴弾)はイカルス天文台における改造で搭載されたヤマトの新装備のひとつ。
位相変換装甲、とくにゴルバクラスの消波能力を持つ装甲を無力化して貫通、敵内部で爆発させることを目的として開発された。形式は量子溶融粘着榴弾となる。構造的には弾体と薬莢からなり、砲塔内での発射時に薬莢から弾体内へ簡易波動炉心である「波動共鳴型量子場圧縮マイクロ波動炉心(マイクロ波動炉心)」が圧入される。
波動カートリッジ弾は着弾することで運動エネルギーを位相変換装甲に相殺させ、弾頭を装甲表面に吸着接触させる。直後、弾体内のマイクロ波動炉心でヤマトのオリジナル波動コアからの特殊共鳴波を中継、弾体周辺の余剰次元の6次元の膜面を激しく振動させることで波動砲に匹敵する波動エネルギーを発生させる。位相変換装甲はこのエネルギー波を打ち消すため、逆相波を生じさせるが、これにより装甲の位相は均衡状態となる。このとき、位相変換装甲の消波能力が無効化された接触面を弾頭が貫通し、装甲内部で起爆するという流れである。
イカルス天文台を急襲したゴルバ・エナムに対して初使用され、これを破壊する威力を見せた。なお、弾頭そのものは従来の波動掘削弾を三式融合弾のサイズまで小型化したもので、2202年の段階で研究開発が進められていたコンデンサー試作弾の技術が反映されている。