日時:11月23日(土)
場所:新宿ピカデリー シアター1
■登壇者:
小野大輔(古代 進役)、古川 慎(アルフォン役)
畠中 祐(土門竜介役)、上村祐翔(揚羽 武役)
福井晴敏(総監督)、中村繪里子(進行/桐生美影役)
本編上映後、満員の観客の前に立った小野は、古代にとって非常に重い展開となったことに「僕もきっと映画館にいる皆さまと同じ心境だと思います。希望と絶望がない交ぜになっています」と切り出すと、「第一章の舞台あいさつの時には『とても辛い状況にあるけれども、この艦に乗る限り希望があると感じています』とお話ししたんですが、第二章は本当にずっとつらい状況。しかしその中でヤマトは出撃するわけです。そうやって艦は進むわけですが、古代の心は後ろ向きになっている。とても歯がゆくて、僕も苦しいんですが、でもその苦しみの先に希望があるんじゃないかと思って。今は必死に上を向いて、涙をこらえているような心境です」と現在の複雑な思いを吐露。
続いてデザリアム軍の将校・アルフォン役の古川が「いよいよアルフォンと、デザリアム軍が本格的に活躍をはじめます。正直ドキドキしているのですが、古代が絶望の淵にいる中、アルフォンを演じる自分もずっと暗闇の中にいます」と語ると、「アレフコの際に、福井さんからその話数での状況を教えていただくのですが、まだ明かされていない設定もあって。すでに次の章も収録しているんですが、それでも分からないことが多過ぎて。暗闇の中、福井さんがひとつひとつ明かりを落としてくれるので、それをどうやって拾い集めるか。そんな収録をしています。(第二章の)あのラストがあったからといって、ひとつも勝ち誇れるものはありません」と笑い飛ばすと、「ひとまずは第二章のアルフォン、デザリアム軍の面々、ヤマトの面々の活躍を見届けていただけたら」と呼びかけた。
ヤマトの乗組員・土門竜介役の畠中は「土門の視点で見ると、フラストレーションがたまる内容ですよね」と苦笑い。「最初は古代艦長の境遇にに同情していました。でも後半にかけて様子がおかしくなって。本編を観て自分でもビックリしたんですが、思ったより土門がブチ切れていたんです。アフレコの時はそうでもなかったと思っていたんですが……。それに加えて“フラストレーションその2”が彼(上村演じる揚羽武)ですよ。古代艦長がああいう状況なのは分かっているのに、わざわざ言わなくていいことをすぐに言っちゃう。」と語るや、上村と一緒に「ほら、(古代は)繊細だから」と言い合った畠中。そんなふたりの様子に小野も「腫れ物に触るような感じはやめてくれる?」と返して会場を沸かせた。
さらに「(畠中)祐が役に入りすぎて。俺のことも嫌いになっている……気持ちは分かるけど」と苦笑いで続けた小野に対して、「この先も航海が続いていくので、古代艦長には早く立ち直ってほしいんです」と訴えかける畠中だったが、「それまでは(小野とは)目を合わせられません」と視線をそらすようにして語り、会場を沸かせた。
一方、ヤマトの新乗組員として登場した揚羽について上村は「揚羽としても、土門と過去に何かしらあって。なかなか目を見て会話ができないところからスタートしていくキャラクター。なので皆さんにどんな感じで受け取っていただけるのかが、楽しみでもあり、不安でもあるという感じでした。ただ試写で拝見して、揚羽の登場シーンを恰好良く描いていただいていて、本当にうれしかったです。先ほども言いましたが、これから土門とどうなっていくのかが見どころだと思います」と説明する。
アフレコは、スケジュールの都合などもあり、分散収録となった。「だからアルフォンとも雪とも録っていない」と残念そうに語る小野に対して、「雪と録ってます」と勝ち誇ったように返した古川。その言葉にうろたえた様子で「どういうことだ、アルフォン!」と返した小野だったが、そんな彼に対して古川が「雪が好きなのか、(雪役の声優)桑島法子さんが好きなのか。どっちなんですか?」と尋ねると、小野が「どっちもだよ!」と力強く返して会場は大笑い。小野も「アフレコでもすれ違うんですよ。スタジオブースから出てくると目の前にベンチがあって。そこに次の出番の人たちが横並びに座っているわけです。そこでブースから出た時に法子さんと古川さんが並んで座っているのを見て……思わず主砲撃ちそうになる」と冗談めかすも、それを諭すように古川が「そのあと、中でどういう会話しているか知っています? 『あなたを殺すわ』と言われているんですよ」と明かして会場を笑わせる。
「そのアフレコスケジュールすら、しっかり計算して仕込んでるんじゃないかと思ったんですが」と推測する小野に、「それはないです」と笑った福井総監督。「でも離れているからこそ、こっちも燃えるというか。あの時期は一番古川くんが嫌いだった。間男のようで……」とすっかり古代の気持ちに入り込んでいる小野に、古川も「(アルフォンのキャスト発表のあった)AnimeJapanのステージでもさっそく間男と呼ばれて……」と苦笑い。「古代さんには、(デザリアム軍の)中で雪さんが会話しているところを見てほしい。あんなに毅然と頑張っている雪を見たら、へこんでいられないはずですよ」とハッパをかけると、「森雪さんはカッコ良かった!」と続けた畠中。さらに上村が「こんな戦術長(古代)のもとじゃな……」と畳みかけ、劇中で繰り広げられていた土門と揚羽のケンカが、ステージ上でも勃発することに。「こっちもバチバチですよ」と畠中が語るなど、役に入り込んだキャスト陣のやり取りに会場も大盛り上がりとなった。
そんな中、小野が「先ほどお話しした通り、法子さんとはアフレコでもゆっくり話をする時間がなくて。会えない時間が長かったんです。初号試写の時も、すれ違ってしまってお話しができなかった。でも、後から連絡が来まして『第二章は良かった。離ればなれの愛が際立っていて泣けたよと。そしてエンディングテーマがそこに重ねってきて、古代と雪は最後まで大丈夫だと思った。ありがとう』と……それは先に言ってよと思いましたけど、それを受けて僕も涙が出てきました」としみじみ語った。
本作のエンディング主題歌「Reach for the Star」の作詞と歌唱を担当したのは小野。その歌詞に込めた思いを「“Reach for the Star”というのは英語の慣用句で高望みする、不可能なことに挑戦するという意味合い。作曲の渡辺拓也さんから、仮歌の時点で“Reach for the Star”というタイトルがつけてあったんです。星に手を伸ばす、という物語とリンクしたこの言葉が作詞のきっかけになりました」と説明。さらに「もうひとつ言えるのは、過去には戻れないということ。僕も12年間ヤマトに関わってきて、過去を忘れることはありませんが、しかし過去に戻ることはできない。だからその過去への思いを抱き締めて前に進んでいかなければならない、そんな思いを込めて詞を書きました」と付け加えた。
続けて「限界までやりきる。ヤマトってそういう作品なのかなと思うんです」と語る小野は、「実はここに来る前に(第二章の)台本を読み返していたんですが、表紙に『落ちるところまで落ちて、限界を突破する』と自分で書いていたんです。こんなこと書いたかなと思ったんですが、それは福井さんが言ってくださった言葉だった。アフレコの時は福井さんが毎回、この話数はこんな感じですと説明してくれるんですが、今回は、ここがどん底です。落ちるところまで落ちますが、ここからは上がっていくだけですからと説明してくれた」と述懐。そこに福井が補足するように「今回、底を打っていますから、これからは上がっていくだけ。ただ制作の方はあまり希望が持てず……でもみんな頑張ってます」とぶちまけて会場は大笑い。それには小野も「みんな満身創痍なんです」と笑ってみせた。
そして最後に「『REBEL3199』というこのシリーズがはじまった時に感じていた希望は、このヤマトという艦に乗るクルーたちが持っている希望を感じていたのかなと思っています。これまで12年間を支えてくれて、一緒にこの艦を進めてくれた仲間たちがいます。途中で別れてしまった仲間たちがいます。そしていま壇上に立っている新しいキャスト、ヤマト監督をはじめとした制作陣……このクルーがいたら、やっぱり希望しかありません。今は絶望かもしれませんが、今日はあらためてこの艦を未来へ進めていく覚悟ができました。皆さんもそのクルーの一員にこれからもなってください」と呼びかけて会場は大きな拍手に包まれた。