■日時
12月19日(木)21:30~22:15 ※上映後イベント
■場所
新宿ピカデリー シアター3
■登壇者
福井晴敏(総監督)、ヤマトナオミチ(監督)
岡秀樹(脚本/進行)、麻宮騎亜(イメージドローイング)
『宇宙戦艦ヤマト』をはじめ、数多くのアニメ作品に効果音をつけてきた音響効果技師の柏原満さんが11月18日に亡くなった。リメイクシリーズでも柏原さんがつくりあげた効果音を受け継いで使用していることから、この日はイベントに先駆けて登壇者たちが黙とうをささげ、故人をしのんだ。
そしてその後のトークでは、『ヤマトよ永遠に REBEL3199』のイメージドローイング、絵コンテ、ティザービジュアルを担当している麻宮騎亜が来場。彼がリメイクシリーズのイベントゲストとして登壇するのは2018年の『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第五章の際に実施された「ヤマトーク」以来6年ぶりとなる。
「宇宙戦艦ヤマトではたくさんお仕事をいただいて。一生懸命やっております。でも本業は漫画家の麻宮騎亜です」とあいさつした麻宮。会場には麻宮が描いた第一章から第三章までのティザービジュアルが3枚掲示されており、この日の司会を務めた脚本の岡から「これは(麻宮が手がける最終章までのポスターが)7枚並ぶんですよね?」と誘い水を向けられると、「並ばせてほしいですね」と意気込んだ麻宮。会場からも大きな拍手がわき起こった。
アニメーター、イラストレーター、漫画家など多方面にわたって活躍をしている麻宮だが、岡も「調べれば調べるほど麻宮さんの仕事は多彩で、本当にマルチなクリエーターさんなんだなということを痛感しております」と語るなど、あらためてそのキャリアに感服した様子。
そんな彼が「宇宙戦艦ヤマト」に出会い、衝撃を受けたのは小学五年生の時だった。その後、アニメ雑誌を通じてアニメーターという職業があることを知り、将来の進路としてアニメーターの道を決意する。そんな麻宮のアニメーターとしての初仕事は1983年の映画『宇宙戦艦ヤマト 完結編』の動画パート。「当時入っていたスタジオが東映動画の下請けだったんですよ。それでたまたまヤマトの動画が1カットだけ入ってきて。それを新人3人で分けて描いていました」と振り返った麻宮。ちなみに彼らが担当したのがディンギル帝国の巨大戦艦ガルンボルストのシーンだったという。
麻宮は漫画家として『サイレントメビウス』『快傑蒸気探偵団』といった作品を手がける一方で、菊池通隆名義でアニメーターとしても活躍していた。だが2000年代に入るとマンガに専念するためにアニメーターとしての仕事を中断。そこから長い空白の期間があったが、2012年の『宇宙戦艦ヤマト2199』の原画でアニメーターに復帰することになった。
「ちょうどその頃、『仮面ライダーフォーゼ』のクリーチャーデザインをしていたんですが、(『宇宙戦艦ヤマト2199』の総監督)出渕裕さんに相談に行ったんです。その時に『実はヤマトをやっているんだけど、設定を見たい?』って言うから、『見せてくれるんですか? 見たい!』と言って見せてもらったら『見たね? この艦に乗らないのか?』と言われて」と笑いながら振り返った麻宮。
それまでアニメの現場から離れていた麻宮を、アニメの世界に呼び戻したのは「ヤマト」だった。「もし出渕さんがほかの作品でどう? と言っていたら逃げていたかもしれない。やはりヤマトって魔法の三文字ですよ。ヤマトと聞いたら、尻尾をパタパタと振ってしまう。業界の一部では『麻宮さん、ヤマトと言われればなんでもやるから』と言われているんですけど、確かにその通り」と笑う。
その言葉通り、アニメーター復帰後も「ヤマト」関連の仕事に数多く関わってきた。『機動戦艦ナデシコ』『天空戦記シュラト』など数多くの作品でタッグを組んだ盟友・羽原信義が監督を担当した2017年の『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』について、「アニメ業界でもなかなかいない親友なので、彼とはフランクに話ができるんです。オープニングなんかも、ファミレスで意見を交換しながら作ったんです。そこにあった紙ナプキンに、ヤマトが再建造された時のラフを描いて。それを羽原さんに渡したら、それをスキャンして絵コンテができてました」と明かす。そんなこともあって、同作では各話の絵コンテも担当している。
そしてその流れで参加することになった、2021年の『「宇宙戦艦ヤマト」という時代 西暦2202年の選択』では、総集編に盛り込まれた新作シーンの絵コンテと、メカの新規カットなどをひとりで担当している。その理由として「総集編とはいえ、新作でつくらざるを得ない部分が構造上あって。『2202』でも頼りになった麻宮さんにお願いした」と明かした福井総監督。一方、シリーズには『2205』から参加したヤマト監督は、当時は麻宮と直接関わることはなかったというが、麻宮からあがってくるビジュアルを見ては「本当にすばらしいなといつも思いながら見ていました」と振り返る。
そして『ヤマトよ永遠に REBEL3199』では絵コンテ、イメージドローイング、ティザービジュアルなど、作品の骨組みとなるような仕事に携わっている。スクリーンには、第一章から第三章までのティザービジュアルや、「イカルス天文台内 ドッグのヤマト」「ヤマトに迫るグロデーズ」「多脚戦車を打ち落とすコスモタイガー」など、本邦初公開となる貴重なイメージドローイングを次々と投影。さらに「デザリアム軍の新戦闘機アルクティアに追われるコスモタイガー」「どこかに突入している機動甲冑(かっちゅう)」「何かにやられているグランドリバース」など、第三章のネタバレビジュアルも登場し、「バトルも趣向をこらしていますよ」と期待をあおった福井総監督。観客も興味津々な様子で、彼らの話に耳を傾けていた。
「今日は質問をたくさんいただいたのに、2つだけしか紹介できなかった。読みたいものがあったのに、時間がなくてごめんなさい……。2回戦、やる?」という岡の提案に会場から大きな拍手が。麻宮も「またね。仕事がたまったら」と返答するなど、トークショー再登板の実現に期待を寄せていた。