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2025.05.15 NEWS

『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』
ヤマトーク【メカデザイン篇】レポート


■日時:5月8日(木)21:30~22:30 ※上映後イベント
■場所:新宿ピカデリー
■登壇者:
 福井晴敏(総監督)
 ヤマトナオミチ(監督)
 玉盛順一朗(メカニカルデザイン)
 岡 秀樹(進行/脚本)

 * * *

4月11日からはじまった「第三章 群青のアステロイド」の上映最終日。会場を見渡したヤマト監督も「上映開始から1カ月近く経っていますが、これだけの皆さんに来ていただいて。本当にありがとうございます。引き続きよろしくお願いします」と感慨深い様子であいさつ。この日のヤマトークのゲストは『2199』以降のシリーズに参加してきたメカニカルデザインの玉盛順一朗。宇宙戦艦アリゾナをはじめとした初公開の設定資料をもとに、数多くの貴重な話が飛び出した。


第三章でいよいよ登場したアリゾナについてコメントを求められた玉盛は「感無量です。主砲以外ももうちょっと見せてほしかったけど」と語り、会場は大笑い。「順番がありますから。これからですよ」と返した福井総監督は、「今回は顔を隠した仮面キャラといいますか。そこから段階を踏んで(顔を見せて)いくのが美しいなと思いますので」と今後の展開を語り、会場を沸かせた。

スクリーンには、玉盛がアリゾナをデザインするにあたっての思いが投影された。そこには「誰が見てもかっこいい艦<アリゾナ>。でも全く活躍できず、消えていった艦<アリゾナ>。その悲劇と無念は「さらば宇宙戦艦ヤマト」のアンドロメダ以上。私は<アリゾナ>の無念を晴らしたかった。『2199』総監督の出渕さんが若き日にデザインした、その魅力を100%尊重しつつ、リメイクシリーズの世界に存在する艦として全力で命を吹き込みました」という熱い思いが記されていた。

その思いについて「我々の世代は、プラモデルでヤマトに親しんだ方も多かったと思いますが、アリゾナってプラモデルでも発売されてないんです。劇中でもせいぜい2カットか3カットくらいしか登場しなくて。発進したと思ったら、次のカットでは沈んだというか、やられた状態で。本当にもったいないなと思っていた」と玉盛が語ると、それを補足するように岡が「それは多くのヤマトファン共通の思い。『宇宙戦艦ヤマトIII』に登場した、アリゾナを筆頭とする護衛戦艦はそれぞれが数カットしか出番がなくて。それなのに40数年間、ヤマトのメカファンの方は、それを深掘りし続けるという。異常ともいえる状況が歴史的にあるわけです」と語るとドッと沸いた会場内。

そんなファンに愛されてきたアリゾナをデザインするにあたり、「アリゾナのデザインを描いて投稿したりとか、プラモデルを自分で改造したり、3Dプリンタでつくったりと。ファンの方が先に形をつくっているものですから、こちらとしてはやりにくい部分はありましたね」と苦笑いの玉盛。そんな中、アリゾナをどうデザインしていったのか。そこでスクリーンには、玉盛が描いたデザイン画を投影しながらその裏側を解説していく。「以前、『ヤマトマガジン』に描かせていただいたものをベースとしています。リメイクシリーズでいうとドレッドノート級に近い、あるいはもう少しだけヤマトに近い、そんなイメージで描いています。ヤマトより大きくするか、小さくするかという話もありますが、多少大きくなってもいいんじゃないかということにしています。リメイクシリーズのヤマトが333メートルで、アンドロメダが444メートルとゾロ目を使っていたりするんですが、さすがにもうゾロ目の数字は当てられない、ということで三三七拍子で。ヤマトよりもちょっと長い、ということにしています」と337メートルにした理由を玉盛が明かすと、福井総監督も「初めて知った!」とその設定に驚きを隠せない様子だった。

その後もアリゾナの主砲塔や副砲、艦橋まわり、内部構造など、緻密な設定資料をもとに繰り広げられる玉盛の話に、登壇者のみならず観客も興味津々。今後のアリゾナの活躍について福井総監督も「今後どうなるかは……全部決まっているんですけど、ただ唯一リメイクでは拾っていなかったあれをもうちょっと活かした新兵器も積んでいます。果たして誰が乗って、誰と戦うのかというところも含めて、ご期待は裏切らないことになっていると思いますので、是非ご期待いただければ」と期待をあおるひと幕もあった。

続いて、宇宙戦艦ヤマトのデザインについても解説。福井総監督がこだわったという、艦首の錨マークについて「あれは実は、(『2202』から登場した)銀河で試されたことがあるんですよ。ただペイントにした状態だと小さくなってしまったので、『3199』のヤマトではなんとかせねばと思った。それと錨の形も「COSMO NAVY」の正規の形と、この3つ穴が開いているものとでは相当力強さが違うなというのも銀河を見て思ったので。玉盛さんとのやり取りの中で、そこはレリーフにしてしまおうと。自分としてはそこで『3199』のヤマトの面構えが見えてきたというところはありますね」と解説。ちなみに玉盛によると、この錨のレリーフの部分は、学生帽の帽章がついている部分のような立体感をイメージしたという。

さらにヤマトに搭載された全天球レーダー室についても解説。このシステムの概念や大きさ、艦内の配置までも玉盛が考案したものだった。「もともと原作にあるような、大きなプラネタリウムのような球があって。何人ものオペレーターの席をクレーンで移動させるというのは、あれは物理的にどう考えても無理だろう。でもあの雰囲気は壊したくなかったし……」と思案したという福井総監督。「第2艦橋はあまり使われていないので、そこをつぶして入れればいいのでは?」という福井総監督のアイデアも、他スタッフから猛反対にあい、採用は見送りになった。

そこで玉盛に相談をしたところ、艦橋の第5甲板と第6甲板の間にある箇所に置くことを提案されたという。「あれは『2199』の時からデザインとしてスペースを空けていたので。(全天球レーダー室が入るとしたら)たぶんこのあたりだろうなということで、空間を残しておいたんです」とこともなげに語る玉盛に、会場は驚くとともに大きな拍手が。「『ヤマトよ永遠に』のロマンアルバムを見ると、口絵のピンナップがあって。内部構造なども描かれていたんですよ。そういうところも参考にしましたね」と原作に対する多大なるリスペクトぶりを明かした玉盛に、岡たちも思わず「本当に、連続登板してもらって良かったね!」と感嘆した様子だった。

その後もグラディエーター、エイジャックス、コスモタイガーII、コスモパイソン、5式空間機動甲冑、コスモハウンドなど、玉盛がデザインした設定画の数々が次々と披露されるたびに、前のめりになって話を聞いていた会場内。最後にヤマト監督が「第四章までまだ少し時間がありますが、それ以外にもイベントなど楽しめるものもあると思います。引き続きよろしくお願いします」と語ると、福井総監督も「久々に玉盛さんとご一緒できて光栄でした。メカデザイナーの方は空間把握能力がすごいんですよ。本当に皆さんすごいんだけど、その中でも玉盛さんは図抜けている。とにかく線に破綻がない。それでいてケレン味があるということで、本当に無二の才能です。これからもお付き合い願いたいと思います」とコメント。

そして玉盛が「章を重ねるごとに面白くなってきていて。地元でも面白いよと宣伝しています。この間もうちの母がヤマトを見たいと言い出したんです」と明かすと会場は大喝采。最後に岡が「次は六年半という間を空けずにまたここに立っていただけたら」と玉盛に呼びかけて、イベントを締めくくった。

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